転職は人生の岐路。だからこそ、紹介する側には“職業人としての矜持”が求められるはずだ。
急増する転職エージェント(有料職業紹介所)を見ていると、ふと疑問が湧きます。本当に転職希望者の未来を考えて企業を紹介しているのか?
それとも数字を追うために、報酬の良い求人を優先的に斡旋しているのか?
1. 成果報酬ビジネスが孕む“早く転職させる”圧力
ノルマとインセンティブ:エージェントにも給与体系があり、目標件数や売上が設定されています。すると、
- 報酬単価の高い企業を優先
- 紹介から内定までのリードタイムを短縮
この二つが最大化される案件が“推し”になりがちです。
転職回数ゼロの担当者:自ら転職を経験したことがない若手が、机上のデータだけでキャリアを語る。果たして説得力はあるでしょうか。
「退職後すぐに決めないと不利」——この常套句は、果たして事実でしょうか?
2. “無職期間は不利”という神話を検証する
- 財務管理=セルフマネジメント能力:退職後に資金計画を立て、余裕をもって自己研鑽や旅行に充てる人こそ、自己管理能力が高いと評価できるのでは?
- 視野を広げる充電期間:リスキリングや語学学習でスキルを磨いた人材ほど、面接で輝くケースも多い。
- ファクト:ギャップ期間がマイナスに働くのは、理由を説明できない場合。目的あるブランクなら好材料にさえなり得ます。
「とにかく早く決めましょう」はエージェント都合の可能性が高い。
3. 真に“頼れるエージェント”の条件
- 転職経験が複数回ある:実体験に基づくアドバイスこそ共感を生む。
- 管理職・人事経験を持つ:採用側の視点を理解し、面接突破のポイントを伝授できる。
- キャリアの“長期設計”を語れる:短期転職だけでなく、3年・5年後の市場価値まで描ける。
理想を言えば、40代以上で複数社を渡り歩き、マネジメントも経験したプロがエージェントを務めるのが望ましいと考えます。
4. フリーランス代理店モデルの落とし穴
一部では、フリーランスを代理店化して転職者を紹介させるスキームが拡大中です。しかし、
- 案件の“見せ売り”:報酬テーブルの高い求人だけを流す傾向が強まる。
- 法人の品質管理が難しい:面談プロセスの基準がバラバラになり、ミスマッチが増える。
“お金の匂い”が強すぎる仕組みは、結局ユーザーの信頼を損なう。
5. 転職は“一世一代のイベント”
家計を背負う30〜40代にとって、転職は大きなリスクと不安を伴います。
そのカウンセリングを新卒や転職未経験者に委ねる現状は、正直理解に苦しみます。
- 経験の浅さ=視野の狭さ:表面的な求人票のスペックだけでマッチングを判断しがち。
- “寄り添い”不足:転職後に続けるコツ、家族との向き合い方など、本当に必要な助言が抜け落ちる。
6. 結び――“数字”より“人”を見よ
料理をしたことがない人がレストランを開いたら?
それと同じくらい、転職未経験者が人生の転機をナビゲートするのは危ういことです。
有料職業紹介ビジネスは、人の未来を左右する重責を担っています。
成約件数だけを追うのではなく、転職者が入社後に輝き続けるか――そこにこそ評価軸を置くべきではないでしょうか。
数字より倫理、短期利益より長期信頼。
そんな姿勢を持つエージェントが増えることを、切に願います。
